寺院建物、仏具等で錺金具を取り付ける場所が決まったら、紙を当てて型を取ります。その型を基にフリーハンドで模様をデザインして図面を起こし、地金に書き写します。デザインを起こすのは設計と同じような作業で、現物の修復から新たなアレンジデザインまで多岐に亘ります。歴史の理解と技術の読み解き、イマジネーションが重要な作業です。錺金具の地金は加工しやすいという性質から主に銅板を使用します。
鏨は、直線、曲線、模様の付いた物など色々あり、その数ある鏨を使い分け金槌で叩いて伝統模様や唐草模様を地金に彫りこんで行きます。蹴彫は下書きした模様に沿って一本の鏨で連続的に打ち込んでいく技法を言います。文字通り、鏨の刃先を蹴って滑らすような技法なので蹴彫と名づけられました。その後、打ち込んだ地金を裏からも木槌で叩き膨らませたり、曲げたりすることで立体感が生まれ木地と一体化するように細工します。
牡丹、菊、唐草模様等彫った後に、模様以外の平らな部分に細かい魚卵のような点々模様を打ち込んでいきます。これを魚々子蒔きといい、錺金具全体の立体感を出すのに施す演出方法となります。
模様が打ち終えたら切り鏨(曲線等を切る鏨)や糸鋸で曲線を切り離し、直線は金切りハサミや直線の切り鏨を使って切り分けて行きます。地金に唐草模様など、くり抜いて模様を表すときは糸鋸を使います。
平らな部分に付く金具は、仕上げ用の金槌で真っ直ぐに整え鑢当てをして仕上げて行きます。柱などの円柱の物や、品物にうねりの付いている所に付ける金具は地金をさらに加工しやすいように熱して柔らかくする工程(なまし)が入ります。鞣された地金をうねりの付いた所に添い合わせ形を作っていきます。